【武野八景の四・函碕舊池-P3】の翻刻・訳文・注釈
(原文画像後半の「吾庵疉翠」は次ページで解読)
次郎兵衛覺非常 ⇒前ページ「函碕舊池-P2」からの繰り越し
次郎兵衛非常の物なるを覺り、腹を脧めて兩手を入れ、握て齧斷す、岸に至るに及て、
・覺=覚
・脧:(さい、すい)しじまる⇒「縮まる」と同義と解す。
・兩=両
・齧:(げつ)かむ、かじる、欠ける
・斷=断
滿池朱殷たり、爾後水暫く涸る、郷人因て號して食蛇次郎兵衛と曰ふと云、予幼にして
母の言を聞くに曰、
・滿池:(まんち)池一面、水が満ちている池
・滿=満
・朱殷:(しゅあん)赤黒いいろ、血の古くなった色
・爾後:(じご)そののち、その後、以後
・號=号
我れ父母の家に在て、夫次郎兵衛か年六七十の寸、矍鑠として市に出て、市人目せし指て
食蛇食蛇と曰を見るに及と、
・寸⇒時の略字
・矍鑠:(かくしゃく)老年になっても心身ともに元気のいいさま
・市⇒まちの意
・市人:(しじん)町に住む人
妣の年を推して之を計るに、池の竭くる、今に於て百ニ三十年に過きざるのみ、
・妣⇒亡き母の意
・竭:(けつ、げち)つきる、なくなる、かれる
【武野八景の四・函碕舊池-P3】ここまで
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