武野八景‐各地の挿絵・・・一枚のスケッチが多くのことを伝えています。 | 古文書サイトです。戊子サイトです。戊子=つちのえねでは古文書の基礎から上達まで、一般的な知識からその特徴やユニークなことまで、さまざまなページを作成しさらに追加しつつあります。このサイトによって古文書が身近になり古文書の楽しさ倍増になりましたら幸いです。2022年初夏からは江戸時代の武蔵野についての武野八景という書誌の解読を進めています。ホームから興味あるページをご覧ください。

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「武野八景」訳文
武野八景‐各地の挿絵・・・一枚のスケッチが多くのことを伝えています。

【武野八景‐挿絵】の翻刻・訳文・注釈
・・・・・総図(武野八景の位置関係)・・・・・・・・・・・・・・・

八景總圖はっけいそうず
・總圖=総図
・絵師⇒栄保画、黒角印⇒藤原
・朱角印⇒風国図書館蔵⇒解読に不安あり。
・六所の地名を囲む半円形の線が何を表しているか不明。
・甲州道中が書かれていないのがやや疑問。八景各所を結ぶ道筋も書かれていない。
・東西を逆にして書かれているのはなぜか不明。

 東都より六所至六里、立野六所と界接し、立野より玉川北傍、 とうとよりろくしょにいたるろくり、たてのはろくしょとさかいをせっし、たてのよりたまがわきたかたわら、
日野津至二里餘、日野より函崎至三里、函崎より吾庵至二里半、ひののわたしにいたるにりよ、ひのよりはこざきにいたるさんり、はこざきよりごあんにいたるにりはん、
吾庵より宅部至半里、宅部より将塚至半里、将塚より金橋至二里餘、ごあんよりやけべにいたるはんり、やけべよりしょうちょうにいたるはんり、しょうちょうよりきんきょうにいたるにりよ、
金橋より 東都至五里餘、往還大凡二十二里きんきょうより とうとにいたるごりよ、おうかんおおよそにじゅうにり
・與=与(と)
・玉川北傍⇒玉川の左岸の意と解した。日野津の位置を玉川の北(現立川市側)に記している。当時は左岸右岸という言葉はあっただろうか。
・餘=余
・大凡⇒「おおよそ」と読んだがあるいは「たいはん」か。

・・・・・武野八景の一、六所挿秧(現府中市)・・・・・・・・・・・・・・・

玄對
神田挿秧 者争就若 魚鱗總自 祈豊熟遠 □蓑笠臻
・玄對=玄対⇒絵師。渡辺玄対(わたなべ げんたい)。本姓は内田、のち渡辺湊水の養子となる。名は瑛、字は廷輝、通称又蔵。山水画、花鳥画にすぐれ谷文晁におおきな影響を与えた模様。
・落款印の文字は解読できず。
・總=総
・□⇒澹(たん、せん、あわい)カ、膽(たん、きも、ぬぐう、い)カ、解読できず。
・臻:(しん)いたる、およぶ、おおい
・詩20文字の読みは解読できず。

・・・・・武野八景の二、立野月出(現国分寺市)・・・・・・・・・・・・・・・

平野秋晴夕 草深多露濡 偏燐月出景 満地如連珠
赤水邉昻
・偏燐⇒片鱗と同義であろうか。
・赤水邉昻⇒絵師。六所挿秧の絵師「渡辺玄対」の実子は「渡辺赤水」。「赤水邉昻」は号、名、字、通名のいずれかであろうか。
・落款印の文字は解読できず。
・詩20文字の読みは解読できず。

・・・・・武野八景の三、玉川觀魚(現立川市、日野市)・・・・・・・・・・・・・・・

玉川非遠地 西郭接長流 為有觀魚樂 都人屢勝遊
・西郭⇒「西の丸」の訳もあることから「西方の区画」の意と解す。
・觀=観
・樂=楽
・屢:(る)しばしば、くりかえし
・勝遊:(しょうゆう)心にかなった遊覧、楽しく遊ぶこと
・絵師の記名はないが、落款印は六所挿秧の絵師「渡辺玄対」のそれに似ている。
・詩20文字の読みは解読できず。

・・・・・武野八景の四、函碕舊池(現西多摩郡)・・・・・・・・・・・・・・・

陶丘田穀
萬頃 舊時池 望□ 唯欝□ 長風 拂草吹 更似 波瀾動
・陶丘田穀⇒絵師。前述の渡辺玄対の次男に内田陶丘がおり本姓渡辺で後に内田に改めるとの記事あり。この人物か。落款印の文字は解読できず。
・萬頃=万頃:(ばんけい)水面または地面が広々としていること。この詩は水面を指す。
・舊=旧
・望□⇒□は「未」カ「参」カ「米」カ「來」カ解読できず。縦画の線が一本線の運筆になっていないように見える。
・欝□=鬱□⇒□は解読できず。
・拂=払
・瀾:(らん)なみ、なみだつ
・詩20文字の読みは解読できず。

・・・・・武野八景の五、吾庵疉翠(現所沢市)・・・・・・・・・・・・・・・

羣山圍寶地疊翠 鎖幽深静野聞 松籟自然生道心
・羣山=群山:(ぐんざん)たくさんの山、連なり続いている山
・圍=囲:(いじょう、いにょう)ぐるりと取り巻くこと
・寶=宝
・疊=畳
・籟:(らい)笛、響き
・絵師の記名はなく、落款印は六所挿秧の絵師「渡辺玄対」の印と玉川觀魚の印に似ている。
・吾庵疉翠を除く各地の挿絵が往時の情景で現在の状況とは当然に大きく異なるが、この吾庵疉翠の絵は現在の状況と酷似しておりこの地は当時の情景を色濃く残している。ほとんどそのままと言える程である。
・詩20文字の読みは解読できず。

・・・・・武野八景の六、宅部寒鴈(現東大和市、東村山市市)・・・・・・・・・・・・・・・

山間十里田〻 上三冬鳫 棲宿一何多 年〻来似慣
・三冬:(さんとう)冬の三か月
・鳫=雁
・棲宿:(せいしゅく)鳥などが木にやどること
・絵師の記名はない。落款印の文字は解読できず。
・詩20文字の読みは解読できず。

・・・・・武野八景の七、将塚暮靄(現東村山市、所沢市)・・・・・・・・・・・・・・・

鳥還狭 山夕 人少将 丘前 不辨軍 營處 只看暮 靄連
・辨=弁
・營=営
・處=処
・靄:(あい)もや、雲のたなびくさま
・絵師の記名はない。落款印は函碕舊池の陶丘田穀のものに似ている。
・詩20文字の読みは解読できず。

・・・・・武野八景の八、金橋櫻華(現小金井市、小平市)・・・・・・・・・・・・・・・

櫻花發若 雲 夾岸亦繽 紛 是與桃源 趣 向誰勝負 分
・櫻=桜
・發=発
・夾岸:(きょうがん)川をはさむ両岸
・夾:(こう、きょう)はさむ
・亦:(えき、やく)また
・繽紛:(ひんぷん)花や雪などが乱れ散るさま
・與=与
・絵師の記名はない。落款印は函碕舊池の陶丘田穀のものに似ている。
・詩20文字の読みは解読できず。

・・・・・武野八景の挿絵・後書き・・・・・・・・・・・・・・・

右八首
藤忠休題
柳顯章書
・藤忠休⇒表紙記名の作者「狹南山人」と同人。本名は大久保忠休(おおくぼ ただやす)。狹南山人について「表紙と見開き」ページに詳述している。
・柳顯⇒人名(呼称と詳細は不明)。序文2-P7の記名者と同人。
・顯=顕
・章書⇒読み「しょうしょ」で「詩を書した」の意と解釈
・藤忠休の角印⇒丸印は「忠休」と読んだ。角印は不明。
・柳顯の黒印は顯の偏と章に読んだがどうだろうか、白印は不明。

【武野八景・挿絵】はここまで

次ページ以降は八景各所を詠んだくずし字の和歌が何ページも続きます。この解読は詩の意味の理解も含めて拙子にはかなりのハードルですが取り組んでみます。少し時間がかかることになりますが続けていきます。

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  • 善哉よきかな (12)
初めに・・・武蔵野の素晴らしさ!その読み解きのスタートです。 表紙と見開き・・・肉太の書跡にデザイン性を感じます。 序文1-P1・・・關脩齢による序-P1 序文1-P2・・・關脩齢による序-P2 序文1-P3・・・關脩齢による序-P3 序文2-P1・・・作者「峡南山人」による序-P1 序文2-P2・・・作者「峡南山人」による序-P2 序文2-P3・・・作者「峡南山人」による序-P3 序文2-P4・・・作者「峡南山人」による序-P4 序文2-P5・・・作者「峡南山人」による序-P5 序文2-P6・・・作者「峡南山人」による序-P6 序文2-P7・・・作者「峡南山人」による序-P7 凡例・・・本文著述に先立つ4箇条の説明 武野八景の一・・・六所挿秧ろくしょそうおう-P1(場所は府中市) 武野八景の一・・・六所挿秧ろくしょそうおう-P2 武野八景の一・・・六所挿秧ろくしょそうおう-P3 武野八景の一・・・六所挿秧ろくしょそうおう-P4 武野八景の二・・・立野月出たてのつきいず-P1(場所は国分寺市) 武野八景の二・・・立野月出たてのつきいず-P2 武野八景の三・・・玉川觀魚たまがわかんぎょ-P1(場所は立川市、日野市) 武野八景の三・・・玉川觀魚たまがわかんぎょ-P2 武野八景の四・・・函碕舊池はこざききゅうち-P1(場所は西多摩郡) 武野八景の四・・・函碕舊池はこざききゅうち-P2 武野八景の四・・・函碕舊池はこざききゅうち-P3 武野八景の五・・・吾庵疉翠ごあんじょうすい-P1(場所は所沢市) 武野八景の五・・・吾庵疉翠ごあんじょうすい-P2 武野八景の五・・・吾庵疉翠ごあんじょうすい-P3 武野八景の六・・・宅部寒鴈やけべかんがん-P1(場所は東大和市、東村山市) 武野八景の七・・・将塚暮靄しょうちょうぼあい-P1(場所は東村山市、所沢市) 武野八景の七・・・将塚暮靄しょうちょうぼあい-P2 武野八景の八・・・金橋櫻花きんきょうおうか-P1(場所は小金井市、小平市) 武野八景‐各地の挿絵・・・一枚のスケッチが多くのことを伝えています。
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