序文2-P6・・・作者「峡南山人」による序-P6 | 古文書サイトです。戊子サイトです。戊子=つちのえねでは古文書の基礎から上達まで、一般的な知識からその特徴やユニークなことまで、さまざまなページを作成しさらに追加しつつあります。このサイトによって古文書が身近になり古文書の楽しさ倍増になりましたら幸いです。2022年初夏からは江戸時代の武蔵野についての武野八景という書誌の解読を進めています。ホームから興味あるページをご覧ください。

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「武野八景」訳文
序文2-P6・・・作者「峡南山人」による序-P6

【武野八景・序文2-P6、翻刻・訳文・注釈】


 ⇐前ページの文節残り部分

隔て入間郡に在り、逃水は地の指す所無し、故に皆取ずや、へだてているまぐんにあり、にげみずはちのさすところなし、ゆえにみなとらずや、
曰、多摩郡数里を限るは何そや、いわく、たまぐんすうりをかぎるはなんぞや、
・不⇒助動詞は平仮名表記
・也⇒助詞は平仮名表記
・曰⇒大久保峡南の発言になることを指す
・也⇒原文「何也」の「也」は「何ソヤ」の送り仮名があり置き字

曰、莽罠の體勢、今猶を徴乎して存し、名跡冣も多きは、此の間に如くは無、いわく、もうびんのたいせい、いまなおちょうこしてぞんじ、めいせきもっともおおきは、このかんにしくはなし、
・曰⇒再び大久保峡南の発言が続く
・莽:(ぼう、もう)犬が兎を追い出す、草の深いさま、くさむら
・罠:(びん、みん)わな
・體=体
・莽罠の體勢⇒「草むらに隠れている獣を追い出して捕らえるような考え方」の意と解釈
・徴⇒「すぐれたものをとりあげる」の意あり
・徴乎⇒読みは「ちょうこ」と解した。「確乎」「断乎」と類似用法と解釈
・冣=最

且つ八所踔遠なるは、巡覧に便ならず、今の擇所は、三飡にして徧すべし、かつはっしょとうえんなるは、じゅんらんにべんならず、いまのえらぶところは、さんそんにしてへんすべし、
・八所⇒「武野八景に選定すべき場所」の意
・踔遠:(とうえん)はるかに遠い
・不⇒助動詞であり書き下し文では平仮名表記
・之⇒助詞であり書き下し文では平仮名表記
・擇=択
・三飡:(さんそん)三食の簡単な弁当
・而⇒置き字であり書き下し文では表記せず
・可⇒助動詞であり書き下し文では平仮名表記
・徧:(へん)あまねく、広く、残らず
・三飡而可徧⇒「三食の簡単な弁当で往来できる範囲の場所にすべし」の意と解釈

 東都より適くと雖、舂糧を宿するに過きすは、則庶幾くは風流の侶、とうとよりゆくといえども、しょうりょうをしゅくするにすぎずば、すなわちこいねがわくばふうりゅうのとも、
・自⇒助詞であり書き下し文では平仮名表記
・空白⇒「東都」に対する敬意表現の空白の闕字
・舂:(しょう、しゅう)臼で穀物をつく。「舂」は「春(はる)」ではない。
・宿舂糧⇒「やどで糧をく」=「宿泊して食事する」の意と解釈
・不⇒助動詞であり書き下し文では平仮名表記(「寸」の送り仮名により「す」と表記)
・庶幾⇒「しょき」とも読み「こいねがう」とも読む⇒「庶」「幾」ともに単独でも「こいねがう」の意あり
・之⇒助詞であり書き下し文では平仮名表記

屢遊觀吟詠、因て以て朽ちざらんことを、故に唯佳景と雅名とを要するのみ、しばしばゆうかんぎんえい、よってもってくちざらんことを、ゆえにただかけいとがめいとをようするのみ、
固より勝の衆夥なる、もとよりしょうのしゅうかなる、
・屢:(る)しばしば、たびたび
・觀=観
・不⇒助詞であり書き下し文では平仮名表記(原文の送り仮名「ンヿヲ」により「ざら」と表記
・ヿ⇒原文および翻刻文の「ヿ(こと)」は明治33年(1900年)の小学校令施行規則で片仮名字体が48種に制限されるまで使われていたとされる
・與=与⇒助詞であり書き下し文では平仮名表記
・勝:(しょう、かつ、まさる)すぐれた所
・之⇒助詞であり書き下し文では平仮名表記
・衆夥⇒読み「しゅうか」意「數や量の多いこと」、「衆多」と同義と解釈。漢詩に「万物衆夥」「異類衆夥」の用法あり、この世に様々なものがあることがめでたい意ありと解釈

豈に八景に畫くべけんや、遊歴の客、行/\問て之を探らは、あにはっけいにえがくべけんや、ゆうれきのきゃく、ゆきゆきといてこれをさぐらば、
・豈⇒「あに・・・や」と訓読するが、原文には「乎」や「哉」がなく「可ンヤ」と送り仮名で読ませている
・畫=画
・可⇒助動詞であり書き下し文では平仮名表記
・之⇒助詞であり書き下し文では平仮名表記
・/\⇒畳字記号
・行行:(こうこう)次第に進みゆくこと、どこまでも歩いていくさま

則總方八百 ⇒この部分は次ページ「序文2-P7」へ繰り越す

【武野八景・序文2-P6、ここまで】

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  • 善哉よきかな (7)
初めに・・・武蔵野の素晴らしさ!その読み解きのスタートです。 表紙と見開き・・・肉太の書跡にデザイン性を感じます。 序文1-P1・・・關脩齢による序-P1 序文1-P2・・・關脩齢による序-P2 序文1-P3・・・關脩齢による序-P3 序文2-P1・・・作者「峡南山人」による序-P1 序文2-P2・・・作者「峡南山人」による序-P2 序文2-P3・・・作者「峡南山人」による序-P3 序文2-P4・・・作者「峡南山人」による序-P4 序文2-P5・・・作者「峡南山人」による序-P5 序文2-P6・・・作者「峡南山人」による序-P6 序文2-P7・・・作者「峡南山人」による序-P7 凡例・・・本文著述に先立つ4箇条の説明 武野八景の一・・・六所挿秧ろくしょそうおう-P1(場所は府中市) 武野八景の一・・・六所挿秧ろくしょそうおう-P2 武野八景の一・・・六所挿秧ろくしょそうおう-P3 武野八景の一・・・六所挿秧ろくしょそうおう-P4 武野八景の二・・・立野月出たてのつきいず-P1(場所は国分寺市) 武野八景の二・・・立野月出たてのつきいず-P2 武野八景の三・・・玉川觀魚たまがわかんぎょ-P1(場所は立川市、日野市) 武野八景の三・・・玉川觀魚たまがわかんぎょ-P2 武野八景の四・・・函碕舊池はこざききゅうち-P1(場所は西多摩郡) 武野八景の四・・・函碕舊池はこざききゅうち-P2 武野八景の四・・・函碕舊池はこざききゅうち-P3 武野八景の五・・・吾庵疉翠ごあんじょうすい-P1(場所は所沢市) 武野八景の五・・・吾庵疉翠ごあんじょうすい-P2 武野八景の五・・・吾庵疉翠ごあんじょうすい-P3 武野八景の六・・・宅部寒鴈やけべかんがん-P1(場所は東大和市、東村山市) 武野八景の七・・・将塚暮靄しょうちょうぼあい-P1(場所は東村山市、所沢市) 武野八景の七・・・将塚暮靄しょうちょうぼあい-P2 武野八景の八・・・金橋櫻花きんきょうおうか-P1(場所は小金井市、小平市) 武野八景‐各地の挿絵・・・一枚のスケッチが多くのことを伝えています。
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