【武野八景・序文2-P5、翻刻・訳文・注釈】
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是に於てか其の勝を分、孫一か之剏所に遵て、以て八景と為、子享と議して之が名を定む、
・乎⇒助詞は平仮名で表記
・剏:(しょう、そう)はじめる、きずつける⇒創の古字
・遵:(じゅん)したがう、ひきいる
・與=与⇒助詞は平仮名で表記
子享其の景を圖し、還て之を佳手に託ス、余題辞を作りて、分ス事實を昈、
・圖=図
・佳手⇒「かしゅ」と読んだ。「佳名(かめい)」「佳士(かし)」など類例あり
・實=実
・昈:(こ)彩り豊かで美しいさま、はっきりしている、明らか
且つ識る所の諸名家に就て、詩文書画を徼とめ、附して以て編を為す、之を世に公に
せんと欲す、
・徼:(きょう)もとめる、うかがう、めぐる
郷人杉子宗、宮忠卿、相搤腕して之を趣かし、即ち梓人に授く、或は曰、
・郷人:(きょうじん)さとびと、故郷の人、俗人、いなかもの
・杉子宗⇒人名(詳細不明)、「すぎしそう」と読んだ
・宮忠卿⇒人名(詳細不明)、「みやちゅうきょう」と読んだ
・搤腕:(やくわん)腕をさすって意気込むこと
・趣:(しゅ、おもむき)急いで行く、さっさと行く、向かって行く
・梓人:(しじん)大工の棟梁、工匠
武野に逃水堀兼井有、勝の雄なる者なり、子八景を作、之を遺こすは何そや、答て曰、
・逃水の語意⇒蜃気楼(しんきろう)の一種、強い日射しのとき水があるように見えて近づくと逃げてしまう現象
・逃水の地名⇒埼玉県狭山市大字水野字逃水
・堀兼井の地名⇒埼玉県狭山市大字堀兼の堀兼神社境内
・之⇒助詞は平仮名で表記
・者也⇒ここの「也」助動詞で平仮名で表記
・子⇒石子享を指す
・何也⇒ここの「也」は置き字
余か擇ふ所の八景、多摩郡数里の間を出てず、而して堀兼井は
・擇=択
・之⇒助詞は平仮名表記
・不⇒助動詞は平仮名表記
・堀兼井⇒前述
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【武野八景・序文2-P5、ここまで】