序文1-P2・・・關脩齢による序-P2 | 古文書サイトです。戊子サイトです。戊子=つちのえねでは古文書の基礎から上達まで、一般的な知識からその特徴やユニークなことまで、さまざまなページを作成しさらに追加しつつあります。このサイトによって古文書が身近になり古文書の楽しさ倍増になりましたら幸いです。2022年初夏からは江戸時代の武蔵野についての武野八景という書誌の解読を進めています。ホームから興味あるページをご覧ください。

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「武野八景」訳文
序文1-P2・・・關脩齢による序-P2

【武野八景・序文1-P2、翻刻・訳文・注釈】


Ⓐ藤 ⇐前ページの文節残り
藤君明夫桑梓の地なれは、即童稚の遊戯、竿に膠して鳥を黏し、とうくんあきおそうしのちなれば、すなわちどうちのゆうぎ、さおににかしてとりをねんし、
・Ⓐ⇒この位置に「空白」がある(原文はやや分かり難い)。空白は藤君明夫に対する敬意表現の闕字
・藤君明夫:(とうくんあきお)序文撰者である關脩齢が本誌作者の狹南山人(本名は大久保忠休、序文記名は狭南藤忠休、別に挟南藤忠休明夫の記名あり)を「君」と尊称
・桑梓:(そうし)くわとあずさ、暮らしの助け、敬老、故郷、郷里
・膠:(コウ)にかわ、動物の骨や皮などを煮詰めて作った接着剤
・黏:(ネン、ねばる)=粘

犬を嗾して獣を逐ひ、足跡夫遐陬奥區を極めたりⒶ、いぬをけしかけしてけものをおい、そくせきそのかすうおうくをきわめたり、
・嗾:(ソウ)けしかける、そそのかす
・遐陬:(かすう)遠い田舎、人里離れた所、辺鄙な土地
・奥區:(おうく)奥深く、険要の地
・Ⓐ:原文はここに「矣」があるが、断定や強調の意の置き字(訓読では読まない)であり書き下し文では記載しない。

今はⒷ席を 都門に抗て藝を講して虚日無、猶徃者の遊ひを想ふ、いまはせきをともんにあげてげいをこうじてきょじつなし、なおさきのあそびをおもう、
・Ⓑ:原文はここに「也」があるが、語気を強める働きの置き字(訓読では読まず書き下し文では記載しない)と解釈(「也」が置き字になる例は少ない模様)
・都門:(ともん)都の門、みやこ。「都門」の前の空白は「都門」という場所や施設に対する敬意表現の闕字
・抗:(こう)上にあげる、進める、高くする。
・藝=芸:「芸」には学問、学術、学者の意あり。
・虚日:(きょうじつ)何事もない日、何もしない日、ひまな日
・徃者⇒原文は「徃者サキ」となっている。⇒辞書には「徃者:(おうしゃ)行く人、去り行く者、過去、以前に」がある。

〳〵少間無事を得、壻石生を拉て、其地に遊歴す、たまたましょうかんぶじをえ、むこせきせいをつれて、そのちにゆうれきす、
・少間:(しょうかん)少しのひま、少し休む
・無事:(ぶじ)⇒ここでは「仕事がない、することがない、ひまなこと」の意
・壻石生⇒女婿の石子享(せきしきょう)を指す。名を文之進、号は清叟園、本名は「石井子享」カ
・拉:(ら、ろう)ひく、ひっぱる、引っ張って連れて行く。

乃舊識迓へてⒶ随ひ行く、Ⓑ君先つ走て勝を得、多岐も迷はず、すなわちきゅうしきむかえてしたがいゆく、くんまずはしりてすぐれるをうる、たきもまよわず、
・乃(だい、ない)すなわち
・舊識=旧識(きゅうしき)=旧知(きゅうち)もとからの知り合い、古馴染み
・迓(が、げ)むかえる=迎える、出迎える
・Ⓐ⇒ここにある「而」は置き字であり書き下し文では記さない
・Ⓑ⇒ここにある「空白」は藤君明夫に対する敬意表現の闕字(原文4行前の「藤君明夫」の前の闕字空白と同じ)
・先つ走て:「・・最初に急いで・・」の意と解釈
・ず⇒原文「不迷ハ」の「不」は助動詞にあたり書き下し文では「ず」と平仮名で表記

木を指て曰、此れ余か幼き時縁て以鷇を探る、水に臨めは則曰、きをさしていわく、これよがおさなきときよってもってこうをさぐる、みずにのぞめばすなわちいわく、
・鷇:(こう)ひな、ひよこ

此撈てⒶ魚を捕る、歴々として指し數ふ、聞く者駭然たり、これすくうてうおをとる、れきれきとしてさしかぞう、きくものがいぜんたり、
・撈:(ロウ)とる、すくいあげる。
・Ⓐ⇒ここにある「而」は置き字であり書き下し文では記さない
・歴々:(れきれき)明らか、はっきり、晴れがましい。
・數=数
・駭然:(がいぜん)驚くさま、愕然

 ⇒この部分は次ページ「序文1-P3」へ繰り越す

【武野八景・序文1-P2、ここまで】

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  • 善哉よきかな (10)
初めに・・・武蔵野の素晴らしさ!その読み解きのスタートです。 表紙と見開き・・・肉太の書跡にデザイン性を感じます。 序文1-P1・・・關脩齢による序-P1 序文1-P2・・・關脩齢による序-P2 序文1-P3・・・關脩齢による序-P3 序文2-P1・・・作者「峡南山人」による序-P1 序文2-P2・・・作者「峡南山人」による序-P2 序文2-P3・・・作者「峡南山人」による序-P3 序文2-P4・・・作者「峡南山人」による序-P4 序文2-P5・・・作者「峡南山人」による序-P5 序文2-P6・・・作者「峡南山人」による序-P6 序文2-P7・・・作者「峡南山人」による序-P7 凡例・・・本文著述に先立つ4箇条の説明 武野八景の一・・・六所挿秧ろくしょそうおう-P1(場所は府中市) 武野八景の一・・・六所挿秧ろくしょそうおう-P2 武野八景の一・・・六所挿秧ろくしょそうおう-P3 武野八景の一・・・六所挿秧ろくしょそうおう-P4 武野八景の二・・・立野月出たてのつきいず-P1(場所は国分寺市) 武野八景の二・・・立野月出たてのつきいず-P2 武野八景の三・・・玉川觀魚たまがわかんぎょ-P1(場所は立川市、日野市) 武野八景の三・・・玉川觀魚たまがわかんぎょ-P2 武野八景の四・・・函碕舊池はこざききゅうち-P1(場所は西多摩郡) 武野八景の四・・・函碕舊池はこざききゅうち-P2 武野八景の四・・・函碕舊池はこざききゅうち-P3 武野八景の五・・・吾庵疉翠ごあんじょうすい-P1(場所は所沢市) 武野八景の五・・・吾庵疉翠ごあんじょうすい-P2 武野八景の五・・・吾庵疉翠ごあんじょうすい-P3 武野八景の六・・・宅部寒鴈やけべかんがん-P1(場所は東大和市、東村山市) 武野八景の七・・・将塚暮靄しょうちょうぼあい-P1(場所は東村山市、所沢市) 武野八景の七・・・将塚暮靄しょうちょうぼあい-P2 武野八景の八・・・金橋櫻花きんきょうおうか-P1(場所は小金井市、小平市) 武野八景‐各地の挿絵・・・一枚のスケッチが多くのことを伝えています。
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