※ご参考読本(午)【翻刻文、書き下し文、読み下し文、解説文】
この読本は拙子のわずかな経験の書き連ねです。一知半解で不足が多々ありますことをご容赦ください。
◯古文書を解読・解釈し、現在の我々が読みやすいように書き直すことを解読筆写といいます。・解読筆写はその目的によって表記方法が異なります。さらに文書の時代背景や関連事項まで説明するものも必要に応じて作成されます。
・翻刻文
・書き下し文
・読み下し文
・解説文
以下にこれらの概要を示しますが拙子の認識の範囲です。解読筆写の区分の名称やそれぞれの表記方法が多少異なるものもあります。
【翻刻文】
◯「翻刻文」は、古文書原文に忠実な解読です。「白文」ともいいます。
・原文の文字を現在通用する文字に変換するだけで、必要以上の手は加えず原文の形式や体裁を保って解読します。
・文字の順番は変えず追加もしない。
・改行や空白も原文通りにする。
【書き下し文】
◯「書き下し文」は、古文書原文の文字順を変えず文字の追加もせず、必要最小限の文字変換にとどめる解読です。
・単に「解読文」あるいは「訓読文」という場合もありますが、下記「読み下し文」との区別の曖昧化を避けてここでは「書き下し文」といいます。
・書き下し文の一般的な約束事項を次に示します。
・原文の文字順を変更せず、文字の追加もしない。
・句点「、」を文意に合わせて付ける(読点「。」は付さない)。
・改行や空白は原文通りの位置にする。
・変体仮名は現代の仮名に変換する。
・平仮名と片仮名は原文と同様区分で表記する。
・助詞の「而(て)、者(は)、茂(も)、与(と)、江(え)」は漢字のまま小さな字で右寄せにする。
・助詞の「ニ」は平仮名の「に」にせずに小さく右寄せにする。
・「ゐ」と「ゑ」は現在表記にせずそのまま記す。
・振り仮名は原文にあれば現代の仮名に変換してその位置に付す。ただし原文の表記方法で記す(例:「あふ」を「あう」にしない)。
・返り点を付す(付さない場合もある)。
・合字は次のようにする。
・「ゟ」と「〆」は平仮名や漢字に変換せずそのままの字体にする。
・「ゟ」と「〆」以外の合字は現代の文字に変換する。
・誤字があった場合はその文字を変換した上で次のようにする。
・正字を示す場合は、その右隣りに「(正字)」と小さく追記する。
・正字を示さない場合は、その右隣りに「(ママ)」と小さく追記する。
・誤字が疑われる場合は、その右隣りに「(正字カ)」と小さく追記する。
・消された文字がある場合は文字を解読変換した上で、その左側に「見せ消ち(みせけち)」記号(※)を付す。
※「見せ消ち」記号は「〻」のように記す(PCでは表示できない記号)。数文字まとまって消されている場合はその範囲の左側に「〻」を波線のように連続して記す。
・紙の虫食いや欠損で判読不可の文字がある場合は次のようにする。
・判読不可文字の位置に文字数分の☐を記す。
・判読不可の文字数が不明の場合は☐をおおよその範囲の長四角にしてその位置に記す。
・捺印がある場合は、その位置に「印」の字を記し、◯か☐で囲む(丸印なら◯、角印ならば☐)。
・花押がある場合は、その位置に「(花押)」と記す。
【読み下し文】
◯「読み下し文」は、書き下し文を現代の一般的な読み言葉の文章に変換したものです。
・口語体で読み順の文章にしますので、書き下し文を次のように変更します。
・返り点や返読文字、再読文字などを読み順に合わせて並び換える。
・助詞の漢字表記を平仮名に直す。
・振り仮名や送りがなは現代表記にする。
・文語体表記などの部分は次のように現在の漢字かな混じり文にする。
「ニ付⇒につき、致度⇒致したく、ゟ⇒より、六ケ敷⇒むつかしき」など
【解説文】
◯「解説文」は、書かれている内容の解釈や用語説明などを加えてさらに理解し易くするものです。
・書き下し文や読み下し文とともに作成され、文書作成時の時代背景と併せて登場人物や地域の説明、書かれている個別事実の相互関係や歴史的事実との前後関係、他の同様文書との関連性など、詳細な調査・分析を反映して解説することになります。